家庭内でやけどをして病院に搬送される高齢者が増えている。高齢者のやけどは対応が遅れがちで重症化しやすく、死に至るケースも少なくない。身体能力が衰える中、日常の危険を防ぐにはどのような対策が必要なのだろうか。やけどの基本知識と共に押さえたい。【八田浩輔】

 神奈川県内の女性(89)が自宅の風呂場であげた大声に、驚いた家族が駆け付けた。女性は空の浴槽にしゃがみ込み、蛇口からは熱湯が流れ続けていた。搬送先の病院で、背中から足にかけて皮膚の中間層(真皮)に損傷が広がる「2度」のやけどを確認。当初は軟こうで治療したが、その後やけどは皮膚深部に達し、皮膚移植を行った。

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 熱傷(やけど)が専門の横浜市立大付属病院高度救命救急センターの春成(はるなり)伸之准教授(47)は「一般的に高齢者のやけどは重篤になるという危険性が認識されていない」と話す。高齢者の皮膚は加齢で薄くなり、熱が伝わりやすいため、やけどが必然的に深くなる。逃げるのが遅れたり、心臓や肺が弱い場合は治療に耐えられない場合もある。また、やけど自体は改善しても、必要な介護レベルが上がるなど多くの場合で日常生活への影響は避けられない。

 春成さんは「やけどの部位の面積以上に、年齢が生死を決めていると言っても過言ではない」と指摘し、これを「熱傷予後指数」と呼ばれる指標で説明する。やけどは深さによって浅い順に1~3度に分けられるが、同指数は2~3度のやけどの範囲(体表面積比)に年齢を足したものだ。過去の症例から、同指数が100を超すと、死に至るケースが一気に増す。単純な例を示すと、70歳の人は、3度のやけど範囲が全身の30%未満であれば助かるが、90歳なら10%未満でないと助からない可能性が高い、といった具合だ。

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 危険は日常に潜んでいる。高齢になるほど、生活する時間の長い住宅でけがをしやすい傾向を示すデータがある。国民生活センターが03~07年度の5年間で、全国20カ所の病院から集めた事故情報2万1860件を分析したところ、65歳以上の約63%が、住宅でけがをする事故に遭遇していた。その割合は20~65歳未満と比較して10ポイント高く、死亡事故のうち、原因の4分の3を占めたのがやけどだった。

 日常生活でやけどにつながりやすい特徴や共通点は何だろうか。国内ではやけどの詳しい原因や予後に関する長期かつ大規模な統計はなく、搬送先の施設ごとの調査に依存しているのが現状だ。

 そこで、春成さんらのチームは、横浜市内5区の介護事業所のケアマネジャーや民生委員など約100人を対象に高齢者の生活実態調査をした。やけどの危険を感じた場面を尋ねたところ、「ストーブの火を付けたまま給油」「やかんの火を付けたまま忘れる」など物忘れや不注意に起因する傾向が強いことが分かった。さらに「手に震えがあるがマッチで火を付ける」など、長年刻み込まれた生活習慣に身体機能の低下が重なる複合的な要因も浮かび上がった。

 同病院では、調査結果を基にしたパンフレットを作成し、地域の介護事業所などでケアマネジャーや施設利用者に向けた啓発活動に努めている。提案する具体的な対策は、火を使わせない▽電力で温めるIHに切り替える▽身長に合わせてガスコンロの高さを低くする▽入浴中の追いだきはしない--などシンプルなものだ。看護師のグループは、火の扱いなどに注意を促す歌に簡単な体操を組み合わせて、やけど予防を印象付けるDVDを作成し、地域講習会などで配布を始めた。

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 学会も動き始めた。6月に横浜市で開かれた日本熱傷学会総会・学術集会では、高齢者のやけどがメーンテーマの一つに選ばれ、重症熱傷の全国データベース化に向けたワークショップも開かれた。

 だが、リスクが高い独居の高齢者に向けたアプローチをどうするかなど、課題は山積している。春成さんは「予防に勝る治療はないが、医療者の間でも、やけど予防に対する関心が必ずしも高いとは言えない。標準的な予防策を作り、効果的に広めないと高齢者のやけどの数は減らない」と指摘。学会や行政を超えた取り組みの必要性を強調する。

 

※毎日新聞 2010年7月9日 東京朝刊

山口市の助産師(43)が、出産を担当した同市の女児に、厚生労働省が指針で与えるよう促しているビタミンKを与えず、代わりに「自然治癒力を促す」という錠剤を与え、この女児は生後2か月で死亡していたことが分かった。

 助産師は自然療法の普及に取り組む団体に所属しており、錠剤はこの団体が推奨するものだった。母親(33)は助産師を相手取り、約5640万円の損害賠償訴訟を山口地裁に起こした。

 母親らによると、女児は昨年8月3日に自宅で生まれ、母乳のみで育てたが、生後約1か月頃に嘔吐(おうと)し、山口県宇部市の病院でビタミンK欠乏性出血症と診断され、10月16日に呼吸不全で死亡した。

 新生児や乳児は血液凝固を補助するビタミンKを十分生成できないことがあるため、厚労省は出生直後と生後1週間、同1か月の計3回、ビタミンKを経口投与するよう指針で促し、特に母乳で育てる場合は発症の危険が高いため投与は必須としている。

 しかし、母親によると、助産師は最初の2回、ビタミンKを投与せずに錠剤を与え、母親にこれを伝えていなかった。3回目の時に「ビタミンKの代わりに(錠剤を)飲ませる」と説明したという。

 助産師が所属する団体は「自らの力で治癒に導く自然療法」をうたい、錠剤について「植物や鉱物などを希釈した液体を小さな砂糖の玉にしみこませたもの。適合すれば自然治癒力が揺り動かされ、体が良い方向へと向かう」と説明している。日本助産師会(東京)によると、助産師はビタミンKを投与しなかったことを認めているという。助産師は読売新聞の取材に対し、「今回のことは何も話せない。今は助産師の活動を自粛している」としている。

 ビタミンK欠乏性出血症 血液凝固因子をつくるビタミンKが不足して頭蓋(ずがい)内や消化管に出血を起こす病気。母乳はビタミンKの含有量が少ない場合がある。

 

※(2010年7月9日 読売新聞)

神奈川県は8日、乳幼児を中心に夏風邪の一種「ヘルパンギーナ」(水疱(すいほう)性咽頭(いんとう)炎)が県内で流行し、国の警戒レベルに達したと発表した。注意を呼びかけている。

 県健康危機管理課によると、6月28日から1週間の県指定医療機関209か所の平均患者数が6・55人となり、警報レベル(6人)を超えた。県内で警戒レベルを超えるのは2007年以来。

 ヘルパンギーナは、ウイルスが原因の感染症で、のどの奥に水疱ができ、高熱、食欲不振、嘔吐(おうと)などの症状を引き起こす。乳幼児を中心に初夏から秋にかけて流行しやすい。

 同課では「うがいや手洗いをして予防してほしい」と呼びかけている。

 

※(2010年7月9日 読売新聞)

 経済的な理由で、患者が治療を中断せざるを得なかった事例が、宮城県内の5割以上の医療機関であったことが、県保険医協会(北村龍男理事長)の調査で分かった。

 経済情勢の悪化による失業者の増加などで、医療費に苦しむ患者の姿が浮き彫りとなった。同協会は「症状が悪化し、命を落とすなど、取り返しのつかない事態につながりかねない」として、国に負担軽減策を求める方針だ。

 調査は6月、同協会に加盟する医療機関715施設に半年間の状況に関する質問について郵送、うち118施設(16・5%)から回答があった。

 それによると、患者の経済的な事情で、治療を中断した事例は61施設であり、患者から検査や治療、投薬を断られたことがあるのは62施設。医療費の未払いを抱える医療機関も65施設で確認された。

 中断した病名で多かったのが、長期の治療が必要な糖尿病や高血圧、高脂血症など。中断は、入院や検査設備が整い治療項目が多く、負担が重くなりがちな病院で目立った。

 治療を中断した医療機関からは、失業するなどして保険料の支払いが困難となり、「無保険者の受診が増えている」や「『支払いを給料日まで待ってほしい』と言われた」との声が寄せられた。

 同協会は「経済的な理由で医療が受けられないことはあってはならない。負担を気にせず、いつでも安心して医療が受けられるようにすべき」と事態を重くみている。

 

※(2010年7月9日 読売新聞)

 埼玉県幸手市の日本保健医療大で17日、動物を使って患者らに心身の回復などを促す「アニマルセラピー」の体験授業が行われた。

 市が誘致した4年制の同大は4月に開校し、学生は看護師などを目指している。新潟大大学院などで動物介在看護を研究してきた熊坂隆行准教授(36)が、「看護現場にもアニマルセラピーの導入を」とゼミの授業に取り入れた。大学の授業で扱うのは、全国でも珍しいという。

 体育館で行われた授業には、約50人の学生が参加。講師の山梨セラピードッグクラブ(山梨県)のメンバーが、セラピー犬の扱い方などを実演した後、学生は患者役になってふれあい、癒やし効果などを体験した。

 1年生の戸辺香里さん(18)と鈴木暁理さん(18)は「なでるだけで癒やされる」「患者さんの看護にもいい効果があると思う」と笑顔。熊坂准教授は「来年度には別の動物も扱い、年間通じた講座にしたい」と話していた

 

※(2010年6月18日  読売新聞)

石狩】市民の健康づくりを図ろうと、市は初の「健康づくり計画」を策定する。7月中旬にも学識経験者や保健医療団体関係者ら15人で構成する「健康づくり推進協議会」を立ち上げる。11月末までに原案をつくり、市民や医療関係者らの意見も踏まえ、2011年度スタートの5カ年計画とする方針だ。

 糖尿病やメタボリック症候群(内臓脂肪症候群)など生活習慣に由来する患者が増えている一方、死亡原因もがんや心疾患など約6割が生活習慣病を起因としていることから、病気予防に主眼を置いた計画を策定することにした。

 基本的視点として《1》ライフステージに応じた健康づくり《2》市民主体の健康づくり《3》健康づくり支援のための環境づくり《4》「元気」を増やす健康づくり-を掲げた。このうちライフステージに応じた健康づくりでは、妊娠から出産、子供、働き盛りの市民、高齢者の各段階で、食育やがん検診、特定健診、心の健康づくり、認知症対策などの施策を行う意向だ。

 また、健康づくりを支援するため、情報発信や啓発活動、スポーツ推進、地域医療充実などの施策で環境を整える。市は健康づくり推進協議会と連携しながら、横断的な庁内組織で原案を作成する。

 

※北海道新聞 2010年6月23日

厚生労働省は15日、2007年度から5カ年計画で進めているがん対策推進基本計画の進み具合について、中間報告書を発表した。専門的な治療が行える拠点病院の数や放射線治療機器の設置など、ハード面の目標はおおむね達成できたが、検診受診率の50%達成はかなり難しいとの見方だ。

 厚労省は、患者や医師らでつくるがん対策推進協議会の意見も聞きながら、報告書をまとめた。

 がん検診は5年以内に受診率50%の目標を立てたが、現段階では20~30%台にとどまっており、目標達成は厳しい状況だとした。今後、個人への通知など受診勧奨に力を入れるという。3年以内に未成年者の喫煙率を0%にするという目標も、男子高校3年生の喫煙率は12.8%に上っており、さらなる禁煙対策が必要とした。

 がん拠点病院は4月現在、全国に377病院あり、数の上では整備目標を上回った。院内がん登録も全病院で実施しているが、協議会からは医療の質の評価を求める声や、がん登録の質の担保、情報公開を求める声などの意見が寄せられた。

 

※朝日新聞 2010年6月16日

日本脳ドック学会は、ガイドラインに沿った標準的な検査が可能な134カ所の医療機関を初めて認定した。統一基準で施設を評価することで、病気の見落としや、必要のない予防手術による後遺症を防ぐことなどが狙い。

 脳ドックはCT(コンピューター断層撮影)やMRA(磁気共鳴血管撮影)といった画像検査技術の進歩に伴い、国内では1980年代後半に始まった。くも膜下出血や脳梗塞(こうそく)などが起こる危険性を事前に知り、予防につなげる目的で広がった。

 昨夏設立された学会の施設認定委員会が、応募した204施設から134施設を書類で選んだ。ガイドラインに沿った検査を実施していることや、年間50人以上が受診していることなどを基準にした。端和夫・施設認定委員長は「医療機関を選ぶ際の参考にしてほしい」と話す。

 学会によると、全国で約600以上の施設が脳ドックを実施している。必ずしも摘出が必要でない小さな動脈瘤(りゅう)が見つかった人が、取り除く手術を勧められて受け、医療事故で死亡したケースなどがあり、検査の質のばらつきが指摘されていた。

 認定施設は18日に山形市で始まる日本脳ドック学会総会で報告されるほか、学会のホームページ(http://www.snh.or.jp/jsbd /nintei_list.html)で確認できる

 

※朝日新聞 2010年6月16日

プチ整形で簡単にしわが取れると人気の「ボトックス注射」の9割以上で未承認薬が使われているとして、社団法人・日本美容医療協会が注意を促す通知を医師に流し、患者向けの無料相談に乗り出した。未承認薬は中国、韓国などから輸入されているが、成分や安全性ははっきりしていない。ボトックス治療による健康被害も国内外で報告されている。

 ボトックスは、ボツリヌス菌の毒素を成分とする筋弛緩(しかん)剤。しわを防ぐ効果が3~4カ月間、期待できると広まった。国内では昨年2月、65歳未満の成人で眉間(みけん)の表情じわをとることを効能とする「ボトックスビスタ」が承認発売され、1瓶4万円台(2~4人分程度)で流通している。

 しかし、承認以前から個人輸入で使われていた薬が、いまだに承認薬の数分の1の価格で流通している。承認薬を販売するグラクソ・スミスクラインによると、しわ取り効果をうたう薬剤は年間5万本以上が輸入されており、承認薬のシェアは数%にとどまるという。使用薬剤の多くは中国、韓国などからの輸入薬で一部、本国で承認されているが、国内では成分や安全性を審査されていない。

 グラクソや同協会は薬剤の流通量から、国内の利用者は10万人以上と推定する。

 未承認薬については、緊急性が高い場合や国内に代替品が流通していない場合に限り、医師が個人輸入できる。ボトックスは医師の裁量で、美容目的で広く使われているのが実態という。

 使用された薬剤は不明だが、ボトックス治療による健康被害は国内外で報告されている。美容外科の専門医らでつくる日本美容医療協会には、「両眉がつり上がり、目が下にたれてしまった」「呼吸困難が続いている」などの相談が年間約40件寄せられているという。国民生活センターにも「額から鼻の上部まで腫れた」「まぶたが動かなくなった」などの苦情が寄せられているという。

 米国では、中国製品を使った患者が呼吸困難を起こすなどの事故が報告されている。承認薬でも副作用はあるが、未承認薬は、薬事法に基づき販売されている承認薬に比べよりリスクがあると、厚生労働省も注意を促している。

 同協会理事の大森喜太郎医師は「治療費が1回数千円など、安さを売りにしている所は、未承認薬を使っている可能性が高い。患者は医師に、どの薬を使っているのか確認してから治療を受けて欲しい」と話している。

 無料相談は、同協会のウェブサイト(http://www.jaam.or.jp/)で受け付ける。グラクソは、治療の講習を受けた約1600人の医師の所属医療機関をサイト(http://shiwatori.jp/search/index.html)で公表している

 

※朝日新聞 2010年6月17日

地域精神保健医療の体制を話し合う厚生労働省の検討チームは17日、医療や福祉の専門家チームが精神疾患患者の自宅を訪ね、治療や生活の相談に乗る訪問支援を本格導入することで合意した。重症患者の治療が長期入院に偏っている現状を改め、地域で患者を支える体制に大きく転換することになる。

 検討チームは、人材を育てて医師や看護師らによる多職種チームが担う▽医療機関はベッド削減に取り組む▽住まいの整備を併せて行う、などの方向で一致した。厚労省は来年度予算の概算要求に関連の費用を盛り込む方針。

 在宅の精神疾患患者を専門家らが支える活動は欧米で「アウトリーチ」と呼ばれ、日本にもすでに12チームある。そのうちの一つは検討チーム委員の精神科医、高木俊介さんが6年前に全国に先駆け京都市を拠点にして始めた。医師や看護師、精神保健福祉士ら15人が24時間態勢で患者約120人を回る。

 統合失調症で20年以上入退院を繰り返した男性(47)は3年前に一人暮らしを始め、高木さんらの支援を受ける。週4回、看護師らが訪ね、生活上の悩みや服薬の相談に乗る。スタッフは携帯電話の番号を伝え、緊急時に出動することも。男性は「家で勉強できてうれしい」と話す。

 高木さんによると、チームの経費は年間約1億円。公的医療保険の診療報酬でまかなえる。「入院治療だと3倍はかかる」と指摘する。

 日本では精神科に33万人が入院し、入院患者の4分の1を占める。平均在院日数は313日、約4割の人が5年以上入院している。欧米では入院治療は人権上の問題もあるとして訪問支援を積極的に導入している。

 厚労省は6年前に「入院から地域への移行」を宣言したが、実現は遅れている。検討チームの会合に招かれた元患者は入退院を繰り返した体験について、「自尊心を100%失った」と訴えた。鉄格子がはめられた部屋に閉じこめられ、売店にも行けなかったという

 

※朝日新聞 2010年6月17日